にわか始めました
お久しぶりです。
このブログを更新していなかった約1年間、何をしていたかと言うと、『W-IDOL』というミニコミ誌を作り、サイトや文学フリマで文章を発表していました。ちなみに、文フリではA5判132ページを無料頒布という狂気じみた行動に出ました。この本は通販もしているので、もしよければ『W-IDOL』TwitterのDMからご連絡くださいませ。
さて、ミニコミ発行を通して、私たちの課題が一つ明らかになりました。それは、サークルメンバーの界隈が偏っていること。坂道やジャニーズのおたくはめちゃめちゃ多い一方で、K-POPやプデュ系などのおたくは一人もいないのです。そのため、過去に発表した記事は坂道、坂道、ジャニーズ、ハロプロ、坂道……のように、非常に偏った構成になっております。
そこで、新たな界隈を開拓すべく、我々は<にわか活動>を始めることにしました。
<にわか>は、突然ファンだと公言したり、世間で流行ってるものに乗っかってみたりする人を指す語句です。つまり、我々は、サークル内でまだ誰もオタクがいない界隈をランダムで一人一個ずつ割り当て、その世界に少し足を踏み入れてみることにしたのです!
もしかしたらその界隈のオタクになるかもしれませんし、思いの外、別の人がハマることもあるかもしれません。あるいは、特に何も起こらず、ただ他界隈の知識を増やしただけで終わるかもしれません。しかし、何事も触れてみるまで何も分かりません。
この企画を始めるにあたり、まずは以下の8つの界隈を、ランダムで割り当てました。
誰がどの界隈に当たったかは、それぞれの初回記事で発表します。どのくらいの分量をどのくらいの頻度で更新するかはそれぞれに任せているので、もしかしたら誰も何も投稿せずに終わるという謎現象が発生するかもしれませんが(……)温かく見守ってくださいね……
書いた人:りりい
欅坂 46 によるアイドル・スペクタクルの統⼀ 〜保守としての欅坂 46〜
この前書きの下にある⽂章のようなものは、私こと執筆者(5 年⽣)(新⼊会員)が 4 年⽣だった頃に書いたゼミ論⽂から⼀部を抽出し、コンパクトに改稿したものです。
欅坂 46 の歪んだオタクである私は、このグループをどうにかして、保守的な現象として語ることはできないだろうかと常⽇頃頭を悩ませていました。そんな折にたまたま出会ったのが、本⽂中にも登場するギイ・ドゥボールという⼈とその本だったのです。
この⼈の⾔ってることを借⽤すれば、それっぽい⽂章が書けるんじゃないのか。
そんな衝動が抑えきれず、出しさえすれば確実に単位が来るゼミ論⽂を利⽤したというわけです。教授の講評は聞いていませんが、学術論⽂としてはギリ不成⽴といったところの出来であると思われ、⽣意気にも「だ・である調」で揃えてあることをまず、読んでくださっているあなたにお詫びさせていただきます。
何が⾔いたいかというと、そんな⽂章の⼀部を、このような形で供養させてくれる懐を持った媒体は、早稲⽥広しといえど当サークルを置いて他にないということです。とにかくイカ臭くてわかりづらい⽂章ですが、当サークルに⼊れば、こんな産廃でも多少は⽇の⽬を⾒させてくれるよ、という参考としてお読みいただければ幸いです。
(以下本⽂)
〜保守としての欅坂 46〜
⓵欅坂 46 は⾰命なのか
欅坂 46 のオリジナリティに関してはいろいろな⾔われ⽅がされるが、結局のところ『サイレントマジョリティー』がすべてであると⾔える。まず、アイドルの表現の主題に、社会への反⾻精神という新しいフレーバーを増やしたことが画期的である。そういう反抗的な曲は過去にも多くあっただろうが、モー娘。、AKB 以降のグループアイドル像に⼀⽯を投じた点で、その登場は歴史的だったといって差し⽀えなかろう。Youtube での MV の再⽣回数は 1.4 億回を超え、今なお伸び続けている。楽曲にここまでのパワーを与えているのは、背後の⼤⼈たちによる世界観構築の緻密さである。
その中核が秋元康の作詞術であり、グループの展開全体に影響を与えている。『BRODY』(⽩夜書房、2020 年 2 ⽉号、P48̶50)におけるいしわたり淳治の評論が鮮やかである。
『避雷針』で例えるなら、あの曲って“半同調的な欅坂 46”というグループの側⾯をメタ認知した曲なんですよね。欅坂 46の歌詞って、クラスで「⾯倒くさい奴」って思われているようなキャラクターからの⽬線で歌われるものも多いと思うのですが、『避雷針』はそういう「⾯倒くさい奴」と陰⼝を囁かれている⼈に対してまた別の視点からメッセージを歌う曲になっている。こんな構造の曲、普通は思いつかないですよ。それこそ 2 歩も 3 歩も向こう側で物を作っていなければできない。
こうして歌詞をパッと⾒るだけでも「〇〇ない」っていうフレーズがたくさん⽬に付きますよね。つまり全部否定しているんですよ。「こうしろ」と指図されるのも否定するし、「分かるよ」と理解されるのも否定している。だからファンとしては、ただそれをそれとして受け⼊れるしかない。
本来はこういう歌詞って、今の時代に成⽴させるのは難しいんですよね。⾔いたいことがあるなら SNS でも⾔えますから。わざわざステージで⾔う必要がない。じゃあ誰がそれをやれば成⽴するのかというと、坂道グループのように制服を着ていて清楚な印象の少⼥たちのほうが、佇まいに抑圧されたイメージが漂っているから、⾳楽に乗せてそれを⾔うと真実味が出てくる。
ビジュアル⾯に関して⾔えば、欅坂の⾐装は多くが学校制服や軍服、礼服を思わせ、基本的には全員が同じデザインのものを着⽤してきた。社会学者の鈴⽊謙介やイラストレーターの森伸之が評するところによれば、
鈴⽊「アイドルブームを牽引してきた AKB48 の楽曲は、その成⻑と歩調を合わせてよりグローバルなものになっていきました。そして、同様にグローバルな楽曲が特徴の K-POP アイドルも、⽇本にどんどん進出してきた。そうして、カワイくてダンスが上⼿くて伝統的なアイドルソングを歌うようなアイドル⾃体がすごく増えてきたんです。⼀⽅で欅坂 46の場合は、制服はかなりシックし、振り付けにモダンダンスのような動きを取り⼊れるなど、表現としてもどちらかと⾔えばアート寄りの世界観を感じさせるものがある。グローバルなアイドル市場のアイドルとはちょっと違う、⽇本にローカライズされた⽂脈を感じさせるアイドルだと思います。」(1)−1
森「『⽀配されるな』と歌いながら、体制側によって決められた制服をかっちり着ているという⽭盾がありますよね。しかし、だからこそ内側に秘めた意志の強さも感じられます。いつかこの場所ではない“どこか”へ⾏くため、ひそかに準備を進めているといった感じですね」(1)̶2
歌詞のメッセージ性、ビジュアル、ダンス、そしてそれらの間に仕組まれた⽭盾。雑にまとめれば「デザイン」の観点において、欅坂 46 はアイドルの多様なあり⽅をさらに押し広げたグループであると⾔える。デビュー以来、アイドルシーンの⾰命の担い⼿であるかのように持ち上げる⾔説が絶えたことはなかった。あえて奇妙な表現を使うが、「右か左かで⾔えば、左」なグループに⾒えるのである。
しかし、アイドルグループというものは(アイドルに限った話でもないだろうが)、⼀つの側⾯からだけ⾒ても、その有り様を定義できないものだ。トップアイドルの活動は、テレビの冠番組や外部の仕事での活躍、主演ドラマや舞台などのスピンオフ的なコンテンツの存在、ライブの内容など、多くのコンテンツのすべてがプロモーションとして連関しあって形成される網の⽬である。しかもその受容においては、所属事務所や運営の性質、ひいては当時の世相などといった背景情報も影響を与える。そうした相関図全体に対する包括的な認識を前提とせず、それぞれのコンテンツに対する個別的な⾔及のみによってグループの存在を定義づけようとしても、説得⼒は⽣まれない。
欅坂 46 がいかなる存在かを⾔語化しようとする場合、作品を作品として批評する視点の他に、具体的にはどのような視点があり得るだろうか。私は、アイドルシーンを俯瞰する業界論的な視点が特に必要になるグループであると考える。
正確には、欅坂 46 の作品をわかろうとすると、アイドルシーン全体について⾔及を避けては通れないのである。そもそも「サイレントマジョリティー」において、業界の⼤⼈によってコントロールされる側⾯が強いはずのアイドルたちが「⼤⼈たちに⽀配されるな」と歌う状況はいびつといってよく、そこに対する違和感は、リリース以降ファンダムの内外から常に呈されてきた。⼩泉今⽇⼦「なんてったってアイドル」が、アイドルというジャンルの誕⽣をアイドル⾃⾝が意識するようになった状況に対する記念碑的な曲であるように、作詞におけるメタ的な視点の利⽤は秋元康の⼗⼋番である。「サイレントマジョリティー」の⽭盾もまた、そうしたメタ的な、「デザインされた⾃⼰⽭盾」であると⾔える。
つまり、作品群の独創性が、バックグラウンドへの意識=業界論的な視点の導⼊によって裏打ちされているのであり、この複雑さが欅坂 46 の唯⼀性である。
⓶業界の相関図における、欅坂 46 の保守性
結論から⾔うと、業界論的な意味における欅坂 46 の存在感は、既存のトップアイドルシーンの「体制」を補強する保守的なものとして発揮される。ここでいう「体制」を定義するなら、秋元康関連グループを始めとする、経済⼒並びに業界における政治⼒が⾼い事務所のグループから売れていくという芸能界の現状に他ならない(以下、鉤括弧付きの「体制」はこの意味として扱う)。
地下アイドルやそれに対する地上、天空などといった呼称が⽰すように、アイドルシーンにおいてはインディーズとメジャーの境界が⽐較的はっきりと分かれているどころか、全く別の⽂化として捉えられることが多い。地下アイドルと呼ばれるようなインディーズアイドルの全てが、いつの⽇かメジャーデビューして「売れる」ことを望んでいるとは限らず、地下アイドルシーンはトップアイドルシーンとは別ジャンルのように並存していると⾔える。しかしその⼀⽅で、トップアイドルシーンにとっての下積みの場、すなわち新規性と多様性の供給源としての機能を地下アイドルシーンが担ってきたことは、AKB48 が実証しているところだ。
しかし、いかにシステムやコンテンツが優れていたとしても、経済的・政治的に脆弱な運営⺟体が多い故に、運営が頓挫してしまうグループも多いのが現実である。そう考えた時、48 系列のグループと乃⽊坂 46 の地盤=ファンコミュニティを引き継いだだけでなく、緻密で新しい企画とそれを実現する⼤⼈の⼒を⽣まれながらに持った欅坂 46 の存在は残酷であると⾔える。地下的な現場でいかに新しい展開やコンテンツが育成されようとも、そうした⾰新勢⼒がその⾰新性を根拠として、業界を構成する政治的相関図に参⼊し更新することがもはや不可能に近く、既存のトップたちが⼿を替え品を替えていくことによってしか、シーンのフレッシュさが保たれなくなっていく状況の完成を、欅坂 46 は体現しているのである。
これこそ、欅坂 46 が抱える保守的な存在感の正体である。作品の中にデザインされた⾃⼰⽭盾の⾰新性を、根拠づけると同時に解毒してしまう、業界論的な⾃⼰⽭盾とでも⾔えようか。この業界論的な⾃⼰⽭盾が、アイドルというジャンルの有様に潜在的な構造の変化をもたらしたと私は考える。それについて、「統⼀的スペクタクル」という概念を⽤いて以下で説明したい。
⓷『スペクタクルの社会』のアイドル論への接続̶̶統⼀的スペクタクルとしてのトップアイドルシーンの成⽴
フランスの思想家であるギイ・ドゥボールは、⾼度情報消費社会を⽀配する⼒学として「スペクタクル」を想定し、1967 年『スペクタクルの社会』、1992 年『スペクタクルの社会についての注解』(以下、『注解』)を著した。
スペクタクルとは
スペクタクルという概念の説明は⾮常に難しいが、河合政之が噛み砕いたところによれば、スペクタクルの社会とは
マスメディアの発達とともに資本主義の形態が情報消費社会へと移⾏し、⽣活の全てがメディア上の表象としてしか存在しなくなった状況(2)
を指す。
さらに亘明志の整理によれば、
スペクタクルの社会では、モノとしての商品よりもむしろ情報やサービスのような形のない商品が主⼒となる。モノとしての商品から切り離されたイメージが⼈びとの⽣を⽀配し決定していくことのなるのである
スペクタクルは表象であると同時に現実でもあって、いわば⼆重化されているのである(3)
つまりスペクタクルは現実から切り離された表象のみを指しているのではなく、モノとして・現実として再⽣産され、⽣活における「⽣産→消費」以外の領域すら決定づけてしまう巨⼤な⼒でもあるということを亘は強調している。それは経済的枠組みや、政策といった形で社会全体に共有される。
統⼀的スペクタクルとは
ドゥボールは『スペクタクルの社会』の段階で、政治的⽀配体制の⽂脈における2 種類の⼤きなスペクタクルを提⽰する。集中的スペクタクルと拡散的スペクタクルである。亘⽈く
ソ連や中国あるいはナチス・ドイツのような中央集権的官僚主義国家は、集中したスペクタクルという形態を取り、⼤衆には選択の余地が残されていない。これに対してアメリカ合衆国や⻄欧諸国のような先進資本主義国家では、拡散したスペクタクルとなる。そこでは互いに⽭盾した主張がスペクタクルの舞台の上でひしめいている。(3)
『注解』では、この⼆つのスペクタクルが収斂して⾏き着く先に「統⼀的スペクタクル」が新たに想定されている。正確には、東⻄冷戦における拡散的スペクタクルの勝利を経て、それがより徹底された形でイタリア・フランスの 2 国に持ち込まれることによって、統⼀的スペクタクルの社会が誕⽣したとされている。冷戦以前の世界においては、スペクタクルが集中している場合は、社会の周縁部がその⽀配を逃れ、拡散している場合には、異なるタイプの⽀配が並存しながらも特定の⼀つが覇権を握ることもなかった。しかし伊・仏に置いて萌芽した情報消費社会では、この統⼀的スペクタクルによる⽀配がメディアによって⼈々の間で過剰に内⾯化され、被⽀配者であることすら忘却させるほどに徹底されていく。つまり、「現状」以外の社会の有り様がもはや想定できなくなるのである。
河合の整理によれば、
この統⼀的スペクタクルの最⼤の特徴は、反体制的⾔説⾃体がパッケージされたメディア的情報として(したがってしばしば商品として)制度に同化吸収され、逆にメディア的権⼒性そのもの(例えば監視の概念など)が社会の無意識となるまでに⼀般化することである。例えば往々にして単なるメディア操作などと安易に混同されがちであるが、実は全く逆であり、むしろ操作の概念が⼀般化してしまうことによって、⼀⾒反体制的な⾔説がまったく抵抗としては機能せず、むしろスペクタクルの連続性と⽀配を強化することにしか寄与しない状況をいうのである。(2)
処刑⼈・欅坂 46
以上を踏まえ、欅坂 46 の保守性と、その果たした役割について整理すべく、「統⼀的スペクタクル」成⽴の過程に当てはめて図式化してみる。群雄割拠の地下アイドルシーンが拡散的スペクタクルの社会、限られた強者が幅を聞かせるトップアイドルシーンが集中的スペクタクルであると想定しよう。
⼀国内で覇権を握ったグループの場合、コンテンツ(アイドルたち⾃⾝)以上に、収益を上げるシステムによって定義づけられることが多い。AKB48 の握⼿券・総選挙のシステムや、K-POP アイドルシーンを⽀えてきたオーディション番組『PRODUCE101』=「プデュ」に代表されるように、優れたシステムは海外に輸出されることで相互に影響を与えながら、巨⼤な集中的スペクタクルの社会としての、地球規模のトップアイドルシーンを形成していく。地下アイドルシーンはそうした動きの中では周縁であるが故に、(ベン図的に重なっているとはいえ)集中的スペクタクルの⽀配を逃れ、グループ・事務所単位の⼩規模なスペクタクルを拡散的に並存させながら、個別具体的な欲求の受け⽫として国内のシーンを⽀えていた。ここに欅坂 46 が現れ、「体制」を統⼀的スペクタクルに転じさせるのである。先に引⽤した鈴⽊謙介のインタビューの続きが、その過程を端的に⾔語化している。
地下アイドルには、楽曲がロックだったり MV や歌詞の表現が内省的だったりと、オルタナティブなタイプのアイドルも少なくありません。グローバルなアイドル市場が満たしきれないドメスティックなアイドルへのニーズを地下アイドルが受け⽌めていたところに登場したのが、欅坂 46 だったのではないでしょうか。(1)̶1
伊仏の統⼀的スペクタクルの社会においては拡散的スペクタクルの勝利が前提だったが、アイドルシーンの場合は逆なのだ。集中的スペクタクル=「体制」の落とし⼦である欅坂 46 が地下的な振る舞いをすることによって、「体制」の全能さをむしろ証明し、ジャンルの更新の担い⼿としての地下アイドルシーンを公開処刑しているに等しいのである。かくして「体制」による⾃前の表現以外の反「体制」的なメッセージは想定不可能となり、既存のトップアイドルシーンが統⼀的スペクタクルとして、市場を占拠するのである。その統⼀の起点になるのが、欅坂 46 の業界論的な⾃⼰⽭盾なのだ。その効果は、作品としてデザインされた⾃⼰⽭盾が効いているからこそ、最⼤限に発揮される。
終わりに
欅坂 46 の元センター・平⼿友梨奈は、その特異な存在感からチェ・ゲバラやジャンヌダルクといった⼈物像と結びつけて語られることが多い。しかしグループの顔として平⼿が背負わされた⽴場をあえて例えるならば、ジャンヌを⽕刑に処した教会権⼒が掲げていた聖⺟像や、T シャツの柄としてのゲバラなどの⽅が、⾔葉遊びとして適切であるとすら⾔えるだろう。こうした⽭盾を抱えて⽣まれたグループであるからこそ、彼⼥たちが普通のアイドルの顔をして参加する活動のすべてが相対化され、その意味が根底から揺るがされるといっても過⾔ではない。ゆえに欅坂 46 こそが、今最も⾔語化が難しいグループであると同時に、最も評論ジェニックなグループなのである。
(1)『別冊カドカワ 総⼒特集欅坂 46』(株式会社 KADOKAWA、2018年)より「欅坂 46 のオリジナリティを考察する」1:P134 2:140
(2)https://artscape.jp/artword/index.php/ 2020/01/12 閲覧
(3)⻑崎ウエスレヤン⼤学地域総合研究所研究紀要より、亘明志『スペクタクルの⽀配とメディア⽂化』(2008 年)P52
記:生きる
幸福だけでアイドルオタクはできる、のか? 地下ドルヲタとジャニヲタが対談してみた。後編 - WebZINE「OTAKU meets IDOL」第4回
前回の続きです。後編は前編で伺ったお話を基に、アイドルオタクの持つ「幸福以外の感情」について掘り下げていきます。
――最前列にいるオタクあれこれ
中の人:オタクをしてる中でキレたことってありますか?
Aさん:キレたこと!? ええーーー……うーーん、ない、ですかねえ。逆にキレたことあるんですか……?
中の人:ある、というかキレてばっかりですよ! まず、さっき言った流出*1でキレましたね。あと、チケット関係でキレたこともありますし……それと、私はいわゆる「パフォ厨」で、現場のパフォーマンスを大切にしているのでセトリに対してキレたこともあります。
Aさん:セトリに対してキレるっていうのは、自分が理想とする方向性とは違う方を向いているセトリだったから、っていうことですか?
中の人:そうですね。本当はオラオラ系に進んでほしくないのに、オラオラ系の曲ばかりやっていたので、その時は「なんやねん!! もっとぶりっこしろや!!!」って思ってました。
Aさん:キレる、とはまた違うかもしれないんですけど、少し嫌だなあと思うオタクがいて。あ、映像を見てもらった方が早いと思うんですけど……自分のよく行く現場の治安があまり良くないんですよね。客層の7、8割くらいが大学生で、アイドルが好きで見るために現場に来ているというよりかは騒ぐために来ているというか……
中の人:(最前列で暴れているオタクの映像を見ながら)わーー……凄いなこれ……最前列これはなかなか厳しい……ていうか髪色やばくないですか? カラフルという次元じゃない……髪色赤はやばい。
Aさん:基本最前はこういう風に髪染めた大学生で埋まってますね。うちの会員で最前管理に殴られた人もいます。
中の人:想像以上ですね……
Aさん:基本的にこういう人たちは終始ジャンプしてる感じです。
中の人:そういえば、私がかつて女性地下のオタクをしていたときも、大学生くらいのオタクは騒ぐために来てる感ありました。独自の芸みたいなの持ってますよね、ああいう人たちって。推しが載ってる雑誌をステージに向かって見せたりとか……ていうか、こういう最前列にいるオタクの人ってなんの仕事してるんですかね?
Aさん:うーん、知り合いにこういうオタクがいないので分かりませんけど、親金なんじゃないですか? 私立大に通ってる人が多い気がするので……といってもこれは自分のイメージですけど。
中の人:あーなんか想像できます。確かに私大通いは多い気がします。ていうか私たちも私大ですし……まあ私はお金ないですけど……
Aさん:自分もオタクの中では下の方なんで……
中の人:ジャニヲタだと最前列が高額転売で60万くらいするので、大学生でもガールズバーとか、夜のお仕事して稼いでる人がいるイメージがあるんですけど、男の人の場合どうなんでしょうかね。女性向け風俗とかしてるんですかねえ。
Aさん:ええ……それ、需要あるんですかね……うーん、やっぱり親金な気がします
――現場でキレるのはオタクだけじゃない!
中の人:キレるといえば、なんですけど、地下アイドルの女の子が接触の時にオタクと喧嘩して泣いた話は聞いたことありますね。オタクがキレるんじゃなくて、アイドルがキレた話ですけど。
Aさん:それ、どういう経緯で喧嘩になっちゃったんですか?
中の人:握手の時にアイドルの子の気に障る発言をしちゃって、それでその子が怒って泣いちゃった……的な。もともと厄介で有名な人だったらしいんですけど。こういうことってないんですか?
Aさん:自分が行ってるところではないですかね。なんでそんな発言しちゃうんですかね……
中の人:目立ちたいんじゃないですかね。目立てば覚えてもらえる、的な。
Aさん:あー、そういう気持ちを持ってる人がいることは納得です。あ、喧嘩じゃないんですけど、4年前にとある大学の学祭で泣いちゃったアイドルの子がいた話は聞いたことあります。ライブの時ってルール、例えば推しジャン*2禁止とか、そういうのがあると思うんですけど、それを守らない大学生が結構いたみたいで。それで、泣いちゃった、っていう……
中の人:え、その子めっちゃいい子じゃないですか! ルール違反に怒って泣くなんて! 世の中にはルール違反に構うアイドルもいるのに!
Aさん:そう考えたら確かに良いことなのかも? 多分、その子はそういう大学生っぽいノリに慣れてなかったんだと思います。結構大きいグループだったので。大学生ノリを見たことがなかったんでしょうね。あと、これは自分の推しの話なんですけど、勝手にフォロワーを買い与えたオタクがいたみたいで。一人ずつブロックして「もうこんなことしないでください」って呟いてましたね。
中の人:梓ちゃんも偉い……もし私が梓ちゃんの立場だったら「やったー!」とか言って素直にフォロワー増えたこと喜びますね。
――YouTubeの再生回数って多いと良いことあるの?
中の人:そういえばYouTubeも再生回数買えるらしいですよね。
Aさん:これ疑問なんですけど、YouTubeの再生回数って多いと何かいいことあるんですか? たまに必死になって回してる人とかいますけど……
中の人:人気の指標っていうのもありますし、ジャニーズJr.の場合、Jr.内ユニット同士で再生回数を競い合ってるんですよね。水曜がこのグループ、木曜がこのグループっていう風に、曜日別に担当制になっていて、一週間で一番再生回数が多かったグループのアー写が翌々週のヘッダーになるんです。あと、去年の場合、SixTONESが一位になることが多かったんですけど、そこからYouTubeの公式イベントへの参加が決まったり、プロモーションに起用されたり、ついにはデビューが決まったりしたので、「あ、再生回数って大事なんだ…」ってオタクが気付いた感じですね。使わないPCで一日中回してる人とかもいるみたいですよ。
Aさん:それは大変そうですね……
中の人:大変ですよ!! だから私は基本的に見たいときにしか見ません!! 再生回数という概念のない世界に行きたい……
――なんでこんなこと(オタク)をしているのか……
中の人:じゃあ、オタクをしている中で一番幸福を感じたエピソードを教えてください。
Aさん:ええーー……なんだろう……
中の人:例えば、私だったら自分の好きなアイドルの子が「デビューしたい」とはっきり言葉にしてくれた時が凄く嬉しかったんですよね。まあその数か月後に謹慎処分になってしまったんですけど……
Aさん:自分はずっと地方で在宅やっていたので、初めて現場に行ったときは、まあ嬉しかったです。
中の人:やばい感動!! 生きててよかった!! 的な?
Aさん:そこまではいかないですけど……そもそも感情の起伏がそんなにないというか。なんでこんなことをしているのか……って思いながらオタクしているので。そもそも、アイドルオタクになったきっかけも従兄弟がオタクだったから「自分もオタクになれば話のネタになるかなー」と思ったことだったので。居場所を探していただけなんですよね。言ってしまえば、メイド喫茶でもよかったんです。でも、サークルの仲間も、結局はアイドルありきの関係だから……
中の人:オタクをやめてしまえば薄くなってしまう、と。
Aさん:だから、サークルも仕方なくやっているだけで……
中の人:それなかなかの衝撃ですよ!! 衝撃の新事実ここにて発覚!! ていうかこれ言っていいんですか!?
Aさん:あ、これ、記事になるんでしたっけ……
中の人:駄目そうだったら原稿チェックの時点でNG出してくださいね……
――「オタクをやめた後」が決まっているから、今すぐにでもオタクをやめたい。
中の人:最後に、今回の対談のテーマ「オタクゆえの辛さ」について聞きたいんですけど、オタクをしている上で病むこととか辛いこととかありますか?
Aさん:あります……というか、それはもうアイドルに金と時間を注ぎ込むのをやめたいということに限りますね。
中の人:おお、結構心に来るアレですね……
Aさん:正直言ってアイドルを応援することで生まれるものがあまりわからないんですよ。
中の人:うーん、まあそうかも。でも結構私は自担に助けられた部分もあるんですよねえ。直接じゃないですけど、この子を通して知り合った人に励ましてもらった経験とかもあるので……だから一概には何も生まれないとも言えないですけど、でも、まあ言ってることは分かります。
Aさん:だから、本当はオタクやめたいんですよね。
中の人:ちなみに、オタクやめたらやりたいことってあるんですか?
Aさん:就活のための勉強ですかねえ。資格取ったりとか……
中の人:それは偉い。真面目だ。
Aさん:学校の成績のことで親から叱られたんですよ。そもそも親は自分が東京でアイドルオタクやってることを知らないので「こんなに勉強する時間があるのになんでこの成績なの?」って。それに、実を言うともう将来やることも決まっているんです。それで、今後資格学校に通うことにもなると思うんですけど、そうなったらアイドルオタクも続けてられないと思うんですよね。つまり、自分は「やめたらどうしたいか」が決まっているから、アイドルに時間と金を注ぎ込むのを辞めたいと思っている、んです。
中の人:逆に「やめたらどうしたいか」が決まっていなかったら「オタクやめたい」って思ってなかったんですかね。
Aさん:いや、それは分からないです……「やめたらどうしたいか」が決まっていない人に聞かないと分からないでしょうそれは。それこそさっきの「尊い」という気持ちがわからない*3のと同じで。「尊い」気持ちが分かる人に聞かないと分からないじゃないですか。
中の人:あーーなるほど! 何とかのことは何とかに聞け! みたいな名言ありますよね?
Aさん:全部「何とか」じゃ分からないです!!
※松尾芭蕉の「松のことは松に習え。竹のことは竹に習え。」のことでした。
――オタクをやめるために、推しとの「約束」を果たす。
中の人:うーん、でも私もオタクやめたいんですよねえ……
Aさん:中の人さんはどうして辞めたいと思うんですか?
中の人:なんというか、精神的にも肉体的にも疲れるんですよね……例えば、女性アイドルだと、2日、3日間集中してライブを数公演行ったり、週末にリリイベを行う期間があったりっていうのが多いじゃないですか。でも、私の応援しているグループの場合は一月に30公演以上まとめてやる!ということが多いんですよね。そんなこんなで、年間にして200公演*4とかやるんですよ……
Aさん:200!? それは多い……
中の人:だから、当然出演している子たちは疲れてきちゃうんですよ。で、オタクもそれに通うから疲れるじゃないですか。それで、出演者も客も疲れているという謎の空間が出来上がって、なんだろうこれは……ってなるんですよね。
Aさん:それは疲れますね……
中の人:でもやめられないんですよね。というか「やめたい」と言うことが一種の芸みたいになってきてるんですよ、もはや。「やめたい芸」的な。
Aさん:「やめたい芸」よく見ますね。特に若いオタクはやってるイメージあります。「干されたからやめる~」って言う人。
中の人:ジャニヲタでもいますよ! そういう人! でもそういう人は大抵やめない。「やめたい」って言ってるうちはやめないんですよね。ああ、やめる方法を知りたい……
Aさん:自分は「白キャンを早稲田祭に呼んだらやめる」って決めてます。*5でも、アイドルを学際に呼べるサークルって大きくないとだめじゃないですか。ほら、今回きゃりーぱみゅぱみゅを呼ぶのも、リンクスですし……うちのサークルではだめだなって思うんです。だから大手のサークルに働きかけてみようかなあ*6って思ってます。
中の人:他力本願型ですね!
Aさん:実はうちに大手サークル所属の人がいるんですよね。
中の人:それはちょうどいい! いけそう!! でも、自分が長になって呼びたいって言う願望はないんですか? ほら、裏で話し放題じゃないですか。
Aさん:そりゃあ、呼べるなら呼びたいですけど……
中の人:なかなか現実的ではない、ですよねえ……でも、そういう風に目標的なのを決めているのは良いですね。私もそういう風にしようかなあ。ハイハイジェッツを学祭に呼べたらヲタ卒! 的な。
Aさん:ジャニーズって学祭にきてくれるんですか?
中の人:来てくれませんね! ジャニーズは基本的にそういうの来てくれないんですよね。
Aさん:じゃあだめじゃないですか……
中の人:あ、実はハイハイの某メンバーのお姉ちゃんが元ハロプロ研修生で今巨人のダンサーやってるんですけど、それだったら来てくれそうじゃないですか? それで、「こんなかわいいお姉ちゃんがいるんだ~~いいな~~……」って思ってやめるとか。
Aさん:なんだろう、その自己満足感……
中の人:もはや同級生つながりで浜辺美波ちゃん*7とか呼んだほうがいい気がしてきた……ああ、もう、じゃあ自担がデビューするかアイドル辞めたら私もオタクやめます!! この子のことを最後の担当だと思って降りたので、自担がやめたら私もやめます!
Aさん:マジですか? メモしますよ?
中の人:いいですよ! メモして!! 本当にやめますから!!
――好きなアイドルと話せなくても、握手できなくても、オタクを続ける理由。
Aさん:普通に疑問なんですけど、なんでオタクやってるんですか……? だって、その人たちSNSもやってないし、リプも返してくれないし、距離は遠いし、接触はないしチェキもないし、中の人さんは大きなオタクコミュニティには属してなさそうだし……おまけに謹慎中なんですよね?
中の人:う、うわーなかなか辛辣ですね……
Aさん:正直言って、楽しくなさそうというか……
中の人:実を言うと自分でもよくわかんないんですよね……でも、「文章を書く」っていうのはオタクでいる理由の軸の一つかもしれないです。私、現代思想が好きなんですけど、そういう考えをもとに、自分の好きなアイドルを色んなの視点から見て、文章を書くのが楽しいんですよね。
Aさん:なるほど……?
中の人:あと、成長していく過程を見るのも好きで。例えば、ジャニーズの子たちって普通小学生、中学生くらいで事務所に入って、そこからデビューを目指すんですけど、その成長の過程の中での心の揺らぎや迷いを見つめるのが好きというか、美しいと思ってしまうというか。
Aさん:あ、それは分かるかもしれません。
中の人:アイデンティティの確立だとか、そういう成長や発達に関する事柄を考えて文章にするのが好きなんです。うーん、結局はアイドルを題材に文章を書くのが好きなのかも。
Aさん:あーー、だからこういう変わった活動してるんですね……
中の人:この活動変わってますかね……?
Aさん:妄想セトリ*8とか、企画書とか、わざわざ作って凄いなあって思います。
中の人:自分でもこのエネルギーを他のことに使いたいって思いますよ!(笑)まあ好きなんですよねえ、結局はアイドルを使って何かを書くことが。
Aさん:それって、オタクをやめたら書けないものなんですか?
中の人:どうなんでしょう……私って興味を持てないものは本当に興味がないから書ける自信がないですね……ハイハイのことが好きだから書ける、というか。でもいざオタクやめてみないと書けるかどうか分かんないですよねえ。うーん、やっぱりオタク一回やめて確認した方がいいかもしれない!(笑)
編集後記
今回「アイドルオタクの辛さ」に焦点を当てたのは、「オタクだから幸せ!推しが尊い!!」という昨今の流行りに乗ることができない自分への嫌悪感からでした。昔からみんなと同じイデオロギーを飲み込むことができなかった私は、折角「アイドル」という「女の子カルチャー」にはまることができたのに、結局「推しが尊い」も「エモい」も「顔がいい」も分からなくて、更には幸福感だけでオタクをすることもできない。どうして私はアイドルオタクという趣味でさえ気楽に捉えたり普通に楽しんだりすることができないのだろうと(ばかみたいな話ですが)真剣に悩んでおりました。しかし、私と同じように「辛さ」を持った人もいるのではないか? もしいるとしたら、そのような人とお話をしてみたらこの暗澹たる気持ちも拭えるのではないか? という思い付きからこの企画を始めました。
先にも書きましたが、今回お話を伺ったAさんは「アイドルオタクをやめたい」と思っている方で、オタクをやめるために推しと約束をし、そしてサークルを立ち上げました。アイドルのオタクをやめたいのに、アイドルの女の子と約束をし、更にはアイドルのサークルまで立ち上げる……行動力の高さは勿論ですが、アイドルオタクをやめるためにとった行動全てに「アイドル」が関わっていて、「こんなにも『アイドル』という枠の中で楽しそうに生活しているのに、果たして本当にオタクをやめたいのかな?」と思ったのが、正直なところだったりします(笑)だって、サークルメンバーと現場に行ったり、推しと握手してお話したり……めちゃめちゃに楽しそうじゃないですか!! しかし、それでも本人は「やめたい」とはっきり言葉にしているのだから、不思議だな、と思います。それと同時に、「推しとの約束」という響きからは、どこか現実味の欠けた、おとぎ話のような美しさを感じました。お話の中にも出てきましたが、世の中にはガチ恋、ピンチケ*9など様々なオタクがいます。そんな中で、Aさんのようなオタクは非常に珍しいのではないかと思います。と同時に、わたしはAさんがとてもとても羨ましい……私は「エモい」という言葉の意味がいまいち理解できないのですけれど、もしかしたらこの羨望のような気持ちこそが、それに近いのではないかと思います。
また、本サークルでは早稲田大学アイドル研究会様の早稲田祭白キャン誘致という目標も応援しております! もし白キャンが早稲田祭に出演したら、その時は私も全力で楽しみたいと思います! ちなみに、早稲田大学アイドル研究会様のTwitter(@wasedaidle)では定期的に現場に行ってきましたツイートがされるのですが、女性アイドルに疎い私は毎度毎度よい勉強になっております。皆様も是非是非ご覧くださいませ!
今回は貴重なお時間をいただきまして、本当にありがとうございました。
また、今回、最後に「どうしてオタク続けているんですか?」と聞かれたことは非常に衝撃的でした。なぜなら、それは、自担が活動自粛中の私にとってはなかなかにセンシティブな話題だったからです……(笑)しかし、Aさんのその問いのおかげで、「私はどうして今もなおオタクを続けているのだろう?」「どうして私はアイドルが好きなのだろう?」と考え直す時間が持てたような気がします。じゃあ、その答えは出たのか、という話なんですが、結局「これだ!」という理由は今でも分かりません。お話の中では、自分なりに「これかな?」と思う理由をいくつか挙げたのですが、それもなんとなく違和感を覚えるんですよね。ただ、一つだけ確かなことがあって、それは辛い辛い言いながらも、結局私は自担のことが好きであり、オタクを続けている一番の理由はやっぱり「好きだから」であろう、ということです。もちろん、その「何故好きなのか」が最も重要なところだとはわかっているんですけど、まあ、それについてはしばらく置いておきましょう……謹慎中ですし(……)
辛いだのオタク辞めたいだの散々言ってきましたが、楽しいことは確かですし、好きなのも本当ですよ! だから、多少辛くても、「好き」や「幸せ」がその辛さより少しでも大きい限り、私はアイドルオタクを続けようと思います。言い換えれば、辛さより、少しでも小さくなってしまったらオタクやめてやる!!! という話なんですけどね(笑)でも、とにかく今だけはあの時すぐに「好きだから」といえなかったことを後悔している自分自身を、今なら「理由は分からないけれど好きだから」とすぐに言える自分自身を信じて、謹慎明け2020年1月1日を待ちたいと思います。
さて、今回は早稲田大学アイドル研究会様にお話を伺い、女性アイドルと男性アイドルの違いや、両者のオタクの特徴、またアイドルオタクの抱える「辛さ」について考えてみました。まだまだ早稲田大学に在籍中のアイドルオタクの方とお話がしてみたいので、お暇な方は是非是非本サークルの活動にお越しくださいませ!
記:中の人
*1:前編参照。12月現在心は穏やかです。
*2:推しが歌っているときにジャンプすること。
*3:前編参照
*4:HiHi Jetsは2018年207公演出演しました。高校時代の中の人調べ。手計算なのであまり参考にはしないでください……
*5:事前のメッセージのやり取りの中で、梓ちゃんと接触の時に「早稲田祭に真っ白なキャンバスを呼ぶ」という約束をしたことを教えてもらっていました。
*6:早稲田大学の各種大型サークル様よろしくお願いいたします!!
*7:HiHi Jetsの橋本涼くんと井上瑞稀くんは高校時代浜辺美波ちゃんと同級生でした。
*8:お話をしている途中に私が勝手に作成した妄想コンサートの妄想セットリストを渡していました。全てが妄想という空虚の産物……
*9:迷惑行為を行うアイドルオタクを指す言葉。元々は中高生のAKB48オタクを指す言葉でしたが、彼らの迷惑行為が目立つようになったため今のような意味でつかわれるようになりました。
幸福だけでアイドルオタクはできる、のか? 地下ドルヲタとジャニヲタが対談してみた。前編 - WebZINE「OTAKU meets IDOL」第3回
皆さまこんにちは! 早稲田大学アイドルと言葉で遊ぼうの会 幹事長兼中の人でございます! 12月に入り、寒くなってきた今日この頃ですがいかがお過ごしでしょうか?我がサークルでは、11月3日より解禁された嵐のSNS&サブスクにメンバー一同沸いております! 特にびんちゃん(前回記事参照)と中の人は毎日「激アツフェス!」と言いながらチェックしております。嵐の曲って聴いたことあるけどCD買ったことはないな~という方は是非是非LINEMUSICやApple Musicなどからチェックしてみてくださいね!
さて、今回は「アイドルオタクゆえの辛さ」に焦点を当てた企画を用意してみました。
近頃「推しが尊い」というワードに代表されるように、「オタクはオタクだから『幸せ』である」という考え方がインターネット上では広く信じられているように思われます。「推しがいるから頑張れる」「推しがいるから幸せ」このような考え方を持つアイドルオタクの方も少なくないのではないのでしょうか。また、「推しがいない人って何を楽しみに生活しているの?」という考えを目にしたことさえあります。確かに、大好きなアイドルのおかげでより生活が豊かになっている、という側面は私自身にも、そして本サークルの他メンバーにもあるような気がします。しかし、我々早稲田大学アイドルと言葉で遊ぼうの会では第1回更新でも述べたように、「アイドルオタクの持つ様々な価値観や綺麗とは言い難い感情も、全てまとめて受け止め、認めていく」という考えのもとで活動しております。もしかしたら「アイドルオタクだから幸せ」という多数(だとされている)の人の存在ゆえに自動的にマイノリティとなっている人がいるのかもしれない。だから、我々は、今こそ、「アイドルオタクだから幸せ」と語る人が多く存在している世の中だからこそ、「アイドルオタクになってしまったことで生まれた辛さ」について、取り上げ、言葉にしなくてはならないと思うのです。
そして、今回は男性アイドルのオタク、女性アイドルのオタク、両方の考えを取り上げるため、早稲田大学アイドル研究会様(@wasedaidle | Twitter)にご協力していただきました。これも、「全ての価値観を受け止める」という考えのもと、男性アイドルのオタクの意見だけを取り上げるのは違うのではないかと思いお願いいたしました。
登場人物
中の人:早稲田大学アイドルと言葉で遊ぼうの会 幹事長兼SNS中の人。2019年12月現在、ジャニーズJr.内ユニットHiHi Jetsメンバー作間龍斗くんのオタク。
Aさん:早稲田大学アイドル研究会 代表。真っ白なキャンバスのメンバー小野寺梓ちゃんのオタク。
予備知識として
・真っ白なキャンバス
2017年9月結成の女性アイドルユニット。最新シングル「いま踏み出せ夏」はオリコン週間ランキング最高7位を記録。2020年3月18日、キングレコードよりメジャーデビュー予定です。
・HiHi Jets
2015年10月結成の男性アイドルユニット。ジャニーズ事務所所属。ローラースケートが特徴のユニット。プライベートにおける写真がインターネット上に公開されたとして、メンバーの橋本涼くん、作間龍斗くんの2名が現在活動自粛中です。
――オタクを辞めることが大学に行く条件
中の人:本日はお願いいたします。
Aさん:お願いいたします。あの、確認したいんですけど、これってネット上に記事にしてアップするって感じですよね?
中の人:そうですね。
Aさん:その時、名前って公開されますか……?
中の人:いや、さすがにそれは……私も他のメンバーも偽名使ってますし……名前出すのって怖くないですか?
Aさん:怖いです。というか親にバレたらやばいんで……
中の人:あんまり家族からアイドルオタクなの良く思われてない感じですか?
Aさん:良く思われていない、というか、大学進学の条件だったんです。「アイドルオタクをやめること」が。
中の人:えーー! マジですか!? お家厳しくないですか!? 我が家は基本こういうのに関与してこないのでびっくりです……
なんとお話を伺って数分で「アイドルオタクを続けていることが親にバレたらまずい」という衝撃の事実が発覚。そんな状況下でも取材に応じていただいて本当に感謝です……
さて、今回は事前に質問用紙を準備し、そちらにご回答していただいてからお話を伺いました。
――地下アイドルはSNSが存在を知ってもらう鍵
中の人:まず、どうやって梓ちゃんのことを知ったか、なんですけど、Twitterで知って、そこから推した……って感じなんですかね。
Aさん:そうですね。
中の人:やっぱりSNSの存在は大きいんですかねえ。
Aさん:そうですね、SNSは大きいですね。SNSがなかったら存在すら知らなかったと思います。Twitterで知って、楽曲に興味をもって、そこから現場に行った感じなので。
中の人:その中から梓ちゃんを選んだのはなんでですか?
Aさん:一番長いレーンだったので、一番人気なのかなって思って。そこから推した感じですね。
中の人:梓ちゃんが一番人気なんですね! 楽曲から入るのは今までにも結構あったんですか?
Aさん:いや、今回だけですね。
中の人:じゃあ特に楽曲派*1、というわけでもないんですね。そして、とにかくSNSは偉大……
Aさん:自撮りとかも見られますし、受験前にはリプをもらったこともあります! ハッシュタグをつければ「いいね」ももらえますし……
中の人:これは羨ましい……ジャニーズはファンレターの返信文化が一部でかろうじて残っているだけで他に交流はないので大違いですね……なんて前時代的なのだろう……
Aさん:SNSでリプやいいねをもらえるというのは、精神的な近さがありますね。
中の人:いや、地下アイドルは精神的距離だけじゃなくて物理的距離も近いじゃないですか!! こっちは触れないんですよ!! 接触*2基本ないんで!!
Aさん:ジャニーズはSNSやってないんですか?
中の人:ジュニアのグループがちょこちょこインスタやウェイボーをやってるくらいで基本ないですね。*3月額324円のケータイサイトでブログやってるくらいで、普通のSNSをやってるグループはほとんどないです。しかもそのケータイサイトもファンクラブに入ってる人しか写真見られない仕組みになってるんですよ!! がめつい!! ジャニーズはがめついんです!!!
Aさん:男性アイドルでもっと小さい規模のものはないんですかね……?
中の人:あー、ジャニーズ、スタダ以外にもあるっちゃあるんですけど、そこまでくると「ガチ地下」になっちゃう場合が多いですね……もちろん、そういうところはSNSやってますよ!
Aさん:結局のところ、遠い、近い、は男性、女性の違いではなくて事務所の大きさの問題な気がしますね。
――CDを買えることがまず羨ましい!
中の人:CD・DVDの複数買いなど、「積んだ」経験ってありますか?
Aさん:ありますね。CDを20枚、30枚くらいかな?
中の人:おおーー! 女子ドルのオタクっぽい!それってイベントの参加のためなんですか?
Aさん:そうですね、元々48が好きだったので握手会参加のために買ってました。
中の人:なるほど……それって誰かにあげたりとかするものなんですか? それとも自分で保管するんですか?
Aさん:基本は家に置きっぱなしで、誰かにあげたりとかはしませんでしたね。そもそも高校時代は周りにアイドルオタクの友達とかもいなかったので……
中の人:「総選挙で1位にしてあげたい!」とか、そういう目的でたくさん買うことはなかったんですかね?
Aさん:そもそも推してた子が48の中でも総選挙で下の方の順位の子だったので、そういうのはなかったです。
中の人:ふーむ。でも私からするとCDが買えるっていうのは、羨ましいですね……私の好きなアイドルはそもそもCDデビューすらしていないので……
――「ガチ恋」はもはや死語?アイドルはコミュニティ形成のための「アイテム」
Aさん:いませんね……
中の人:ええ、マジですか!? ガチ恋オタクいないんですか!? 個人的に女性アイドルのファンといえば「ふちりんさん」*5のイメージが強いので意外ですね……それに、ジャニヲタは結構リアコ多いので……
Aさん:女性から見たらそういうファンが多いように思われるのかもしれませんけど、実際は全くいませんよ。というか、基本的に「アイドルが好き!」というよりは、アイドルを通してコミュニティに属することを重要視している人が多いんだと思います。ライブの後に飲むことを大事にしている人が多いというか……
中の人:あー、でもそれは分かる気がします。私も今年の夏同じ公演に複数回行ってたんですけど最後の方はコンサート見に行ってるのか友達とご飯食べに行ってるのか分からなくなってましたから……
Aさん:もはやアイドルはコミュニティを形成するためのアイテムなんですよね。ガチ恋をしてしまうと、そのコミュニティを壊すことになってしまうじゃないですか。だからいないんだと思います。
中の人:なるほど……あ、あと私はアイドルオタクの人が良く使う「尊い」という言葉の意味が分からないんですけど、この辺りに関してはどうですか?「尊い」とか使いますか?
Aさん:「尊い」……? 使いませんけど……中の人さんはどういうときに使うんですか?
中の人:いや、私もよくわからないので何とも説明できないですね……ただ、最近流行ってるんですよ!「尊い」って言うこと自体が!それと「結婚」も流行ってますね……
Aさん:それは「ガチ恋」的な意味ですか?
中の人:いや、好きなアイドルと結婚してる妄想をするというか……自分もあまりこの流行りが理解できていないので、これも説明しにくいんですけど、「好きなアイドルが自分と同い年の一般人だと仮定して、大学生くらいで出会って、そこから5年くらい付き合って、結婚した」みたいな設定で妄想するのが流行ってるんですよね。
Aさん:それはなかなか……「同担拒否」*6みたいな感じですか?
中の人:「同担拒否」!! よく知ってますねその言葉!! ジャニヲタ以外も知ってるんだ!! まあ、これは「同担拒否」とは少し違いますけど……でも、これは男性アイドルのファンと女性アイドルのファンの違いの一つかもしれませんね。コミュニティ重視でガチ恋をしない、のと、リアコで「同担拒否」というのは。ちなみに、「同担拒否」の人たちは「同担拒否」だけで形成されるコミュニティとかに属してることもあるんですよね。Aくんのオタクはこの子だけ、Bくんのオタクはこの子だけ、みたいな。
Aさん:えーー、そうなんですか……こっちは、同担拒否も、同担拒否だけで作られるコミュニティもないですね……
中の人:ちなみに私は同担拒否じゃなければ、同担拒否で形成されるコミュニティに属したこともありません……
――古今東西オタクのマウンティングとしきたり
中の人:ジャニーズは基本的にプレゼント禁止なんですけど、地下の方はできるんですか?
Aさん:出来るところがほとんどだと思います。勿論スタッフのチェックもありますけど……
中の人:チェックでOKでたら直接渡せるんですか?
Aさん:渡せる……と思います。グループにもよると思いますけど。あと、生もの禁止、1万円以下、みたいな決まりもありますね。
中の人:金額も決まってるんですね。じゃあ60万円のライダースあげる人とかもいないんだ。
Aさん:さすがにそういうのはいないと思います……そんな人いるんですかね?
中の人:若手俳優のオタクだと結構いるとかいないとか聞いたことありますね。プレゼントの金額でマウント取ったりとか……女性アイドルのファンの方ってマウント取ったりするんですか?
Aさん:いや、基本的にはないですね。勿論、SNSとかでチェキの枚数とか、CDの枚数とかでマウント取ろうとする人はいますけど、コミュニティの中でのマウントは少ないと思います。先ほども言ったように、やっぱりコミュニティに属することを大切にするので……
中の人:じゃあ掲示板に晒されたりとかもない感じですかね? 友達売ったりとか……
Aさん:ありませんよそんな怖いこと! 「誰々のレーン並んでたよ~」ってさらっと書き込まれることはあっても、それで関係がこじれることもないですし……他の子のところに行っても「別に? だからなに?」って感じなんですよね。迷惑かけたり騒いだりしなければ別に問題視されることもないです。もちろん、ガチ恋の人が他の子のレーン行ってたら「は?」とはなりますけど、そもそもガチ恋の人も少ないので、それも起きませんね。
中の人:女性「アイドル」ではないんですけど、宝塚って出待ち・入待ち文化が物凄く発達していて、しきたりとかもあるって聞いたんですけど、地下アイドルはその辺どうなんですかね?
Aさん:うーん、自分もよくわかりませんね……AKBとかは大きいグループなのであまりないですけど……地下もないんじゃないですかね。そもそも歴史が浅いのでしきたりとか、ないと思います。
中の人:禁止されてるんですかね。対女の子だからプライバシーとかきっちりしてるのかな。男性アイドルなら最悪の場合、オタクが暴徒化しても殴ってしまえばなんとかなるだろうけれど、女性アイドルの場合そうもいきませんからね……
――この子しかいない! 謹慎になってもファンをやめないオタク。
中の人:推しが流出、例えば彼氏バレとか、未成年飲酒とか、そういうことが起きたことってありますか?
Aさん:自分の推しが流出したことはないですね。でも、最近だとNGTとかが話題になってましたよね。
中の人:あー。あれって結局繋がり*7だったんですか?
Aさん:みたいですね……
中の人:ちなみに私の自担はこの前流出したんですけど、結構それが大事になってしまって実は今大変なんですよ……あの、この話していいですか?
Aさん:いいですよ。
中の人:これ、もう、本当に色んな人に話してるんですけど、簡単に言うと、私の自担と同じグループのメンバーもう一人が厄介なオタクと繋がってた、かも? みたいなことが起きて。
Aさん:あーー……
中の人:一応、二人の名誉のために言っておきますが、真偽は分かりませんよ! 分かりませんけど、そのせいで謹慎になっちゃったんですよ、謹慎!! もう、何やってんねんお前!って感じで。 しかも流出したのが舞台初日前夜だったんですよ! 9月3日から始まって、9月後半に終わる舞台だったんですけど、9月10日に謹慎と途中降板が決まって。で、私は9月10日、謹慎発表当日のチケットを持っていたので一度も自担を見ることが出来なかったんです。しかも謹慎を知ったのは現場に向かう電車の中という運のなさ……
Aさん:うわあ……残りのチケットはどうしたんですか?
中の人:3回は瀕死状態で行って残りは知り合いに譲りました……
Aさん:大変ですね……
中の人:謹慎発表当日の9月10日は地獄のようでしたよ……劇場ロビーの地下から泣き声が聞こえてきたり……あ、あと三井のリハウスってわかりますか?
Aさん:分かります分かります。
中の人:実は私の自担はリハウスのCMにも出ていて。
Aさん:ええ!?
中の人:当然それも途中で契約ぶっちになりましたね。
Aさん:違約金やばそうですね。
中の人:やべえと思います。とんでもねえ額が動いてんだよ!! って憶測でキレました。多分山田涼介*8か誰かの稼ぎで払ったんじゃないですかね……
Aさん:女性アイドルでも流出や謹慎は耳にしますね……
中の人:あーー女の子のアイドルにも流出ってやっぱりあるんですね……そういう場合地下のオタクの人ってどうするんですか? 推し変するんですか? それとも耐え忍ぶとか?
Aさん:うーん、基本的には推し変じゃないですか? 自分の主観ですけど特に地下のオタクはすぐ推し変するように見えるので……
中の人:じゃあ、Aさんだったらどうしますか? もしも、自分の推しと推しと同じグループに所属している子が厄介オタクと繋がっていたら……
Aさん:しかも、それで謹慎になってるんですよね。なかなかの出来事ですね……うーん、自分は今の推しを最後の推しと決めているので、もしそんなことが起きたらオタクやめると思います。
中の人:それは、正しい判断ですね……そうか、私もここでオタクをやめればよかったんだなーー……でも続けると決めてしまったからな……
Aさん:他の子を探そうとは、思わないんですよね?
中の人:そうですねー、こんなことになってしまってもその子以外の子じゃ違うというか、意味がないので。その子しかいないんですよね、結局。ああ、でもオタクはやめたい……
Aさん:謹慎中ってことは現場もないんですよね?
中の人:そうですね。だからなるべく普通のことしよう! と思って、美術館行ったりジャニーズとは関係ない舞台見に行ったりしてますね。
Aさん:え、ジャニーズってお芝居とかもやるんですか?
中の人:やりますね……自担が出るとそれを何回も何回も見ることになるんですよね。
Aさん:確かにそれは辛いかも……
中の人:最後の方は台詞も覚えてきますよ……でも、女性アイドルでもいくちゃんはレミゼとか出てますよね。ハロプロも舞台とかやってたし……
Aさん:やっぱり自分はライブで歌ってるところが見たいです。コール、MIX*9が楽しいというか。
中の人:あー分かります! 私の好きなグループはさすがにMIXはないんですけど、コールはありますよ! 男性アイドルでも地下だとガチ恋口上*10打ってますし……
Aさん:あ、それはテレビで見たことあります! 女性のガチ恋口上!
中の人:あーー多分それ私も見ました……テレビでガチ恋口上ってよくよく考えると凄いなあ……
前編である今回は、女性アイドルと男性アイドルの違い、また両者のファンの違いに焦点を当ててまとめてみました。
今回お話を伺った中で、最も興味深かったのは「女性地下アイドル現場には、実際ガチ恋はそんなに存在していない」「アイドルはもはやコミュニティを構築し、そこに所属するための『アイテム』である」という部分です。
アイドルはコミュニティに属するための『アイテム』だ」という考えですが、実を言うとこれを初めて聞いた時、私はめちゃめちゃに驚きました……というのも、私はただただ「アイドル」という存在に心を惹かれるばかりで、誰かと楽しく話をするために「アイドル」に興味を持ったこと、またはその反対に人間関係に疲れたからオタクをやめよう、と思ったことが一度もなかったからです。それと同時に、私の知り合いもまた(身も蓋もない表現の仕方ですが……)ただ自分の欲望を満たすためだけにアイドルオタクでいるという人ばかりな気がします。
確かに、男性アイドルのファンの方にもアイドルをそのような存在と捉えている人はいるでしょうし、実際「ジャニーズファンは交流やコミュニティを重要視している」という文献も存在しています。また「男性に比べて、女性は趣味そのものではなく趣味を通して交流を図ることを重視している」と言われることが多いのも、また事実です。しかし、いざ自分が男性アイドルのオタク界隈の中に身を置いていると、自分がそのアイドルを「好き」であることに重きを置いた人が多いように感じられるから不思議だなと思います。
コミュニティを重要視するか、自身の「好き」という感情に重きを置くか。全く反対の立場ですが、どちらが優れていて、どちらが劣っている、ということはないでしょう。それと同時に、コミュニティに属していれば、その人間関係で苦しむことがあるでしょうし、アイドルを「好き」であることに重点を置いていたとしても、その「好き」のあり方に自問自答を繰り返すことになると思います。ですから、結局アイドルオタクと辛さというのは切り離せない関係なのでしょう。
また、今回は中の人に降りかかった笑えない(ていうかむしろ笑ってほしい……)オタク不幸話もまとめましたが、実を言うとこれは記事にするかどうか物凄く悩みました。というのも、アイドルのいわゆる流失話や謹慎に関するお話は、こうしてインターネット上に残すことで傷つく人が必ず存在するはずだからです。アイドルオタクといっても、様々な人がいるように、ある一つの出来事に対しても、受け止め方や感じ方は人それぞれです。特に、流出話となれば、すぐに笑い飛ばせる人もいれば、なかなか受け止められない人もいるはずで、だからこの記事をなかなか書き上げることが出来なかったのです。もちろん、このお話は完全に書かないこともできました。しかし、私はアイドルオタクとしての自分をこの出来事抜きに語ることはできないのです。「全てのアイドルオタクの人の感情を受け止めたい」という気持ちで始めたサークルなのに、自分自身の思いさえも言葉にできないというのは情けなさ過ぎる、というわけで今回は端折らず掲載するという判断に至りました。ちなみに、10月にお話を伺ったのにもかかわらず12月の更新になったのはこれでめちゃめちゃに悩んでいたからです……という言い訳で今回は締めたいと思います(笑)
後編に続きます。
記:中の人
*1:メンバーやパフォーマンスではなく、「曲が好き」という気持ちが強いアイドルオタクを指す言葉。「アイドル楽曲とは思えない」曲が好き、という人が多いように思われます。(しかしアイドル楽曲はその他J-POP等に比べて劣っているのでしょうか? その点に関しても議論が必要だと思われます。)
*2:握手会など、実際に触れ合えるイベントのこと
*3:お話を伺った10月29日はまだ嵐がSNSを解禁する前でした。
*4:本気でアイドルに恋をしているオタクを指す言葉。同義語は「リアコ」「リア恋」など。
*6:自分の好きなアイドルの他のファンとは交流しないというスタンスのこと。元々はジャニーズのファンの間で使われていましたが、徐々に声優オタクなど他界隈でも使われるようになりました。ガチ恋、リアコ、リア恋の人はこれに該当することが多いとされています。
*7:アイドルとアイドルオタクが「タレントとファン」ではなくプライベートな関係を持つこと。
*8:鬼のように稼いでそう。中の人の勝手なイメージです。
*9:地下アイドル楽曲に入れられる呪文のようなコール。「タイガー、ファイヤー、サイバー……」と韻を踏んでいることが特徴です。楽曲イントロ部分に入れられることが多い。
*10:地下アイドル楽曲に入れられるコールの一つ。推しに対する愛の言葉が連なっているもので、「言いたいことがあるんだよ!やっぱり○○は可愛いよ!」という言葉から始まります。元々は女性地下アイドル現場で使われていましたが、現在は男性アイドル現場でも流行中。
アイドル楽曲とその他J-POPの違いについて考察してみた! - WebZINE「OTAKU meets IDOL」第2回
皆さまこんにちは! 早稲田大学アイドルと言葉で遊ぼうの会 幹事長兼中の人でございます! 秋学期がはじまり、10月にも入ったところですが、皆様いかがお過ごしでしょうか? 中の人は好きなアイドルが活動休止になり、そのストレスで胃がおかしくなりましたが元気です!!! 元気です……
本サークルでは、10月よりオフラインでの活動を始めました。週に1回、火曜日15:00-16:15(4限の時間帯)14号館3階ホワイエにてゆるゆると駄弁ったり原稿を書いたりしていますので、興味のある方は是非お越しくださいませ!
さて、記念すべき第1回の活動として、先日10月9日にアイドルの曲を聴きながらひたすら駄弁る会をおこないました。聴いた曲はHauptharmonieやでんぱ組.inc、嵐、Hey!Say!JUMP、ジャニーズJr.など多岐に渡るのですが聴いていく中で我々はある一つの疑問に達しました。
何がアイドル楽曲で、何がアイドル楽曲でないのか?
アイドル楽曲の定義って何だろう? 容姿端麗できらきらしてる男の子が歌ってる曲は全部アイドル楽曲? じゃあ菅田将暉が歌ってるのはアイドル楽曲なのか否か? ばかげていると思われるかもしれませんが、そこの境界線って曖昧ですよね。大原櫻子ちゃんとかってアイドルなのか? みたいな……
今回はそんな議論をしながら第1回オフライン活動を座談会形式でまとめてみることにしました。
中の人:このサークルの幹事長。ジャニーズJr.のおたくをしていたが、ところがどっこい担当*1が突如として活動自粛となってしまった。心に傷を負っている。
びんちゃん:中の人に巻き込まれてこのサークルのオリジナルメンバーとなってしまった犠牲者のうちの一人。嵐の櫻井翔くんのおたく。毎週活動に参加してくれる優しい子。
――とりあえず楽曲派アイドルといえば!! ということでHauptharmonie*2セカンドアルバム「Herz über Kopf」より「BUDDY」を聴くことに。
びんちゃん:なんだこの曲……歌ないの?
中の人:歌は途中から始まるよー。でもアルバムの一曲目が歌なしなのはよくあるやつなんじゃない? インスト*3っていうの? バンドとかでよくあるじゃん。「けいおん!」で見たことある。
びんちゃん:バンドとか聴かないからわからんな。
中の人:バンドじゃなくても、セクゾ*4とかでもあった気*5がする。
びんちゃん:セクゾも聴かんからなーー……
中の人:まあいちばん最初の曲ってこういう感じなんじゃない? 私も好きなアイドルグループCD出したことないからあんまり分からないな……
びんちゃん:あ、歌はじまった。
中の人:台詞があるのは女の子のアイドルっぽいよね。でも、ハウプトは野心剥き出しというか、心にたまった鬱憤をまき散らしている感じがするから王道からは程遠いような気もするけど……
びんちゃん:途中から曲調変わるのは好きかも。うーん、でも、もっと明るい曲が聴きたいわ……アイドルだし……もっと、こう「頑張ろう!♡」とか「君は頑張ってるよ!♡」みたいな曲ないの?
――もっと明るい曲が良い! ということででんぱ組.inc*6「W.W.D」のMVを見ることに。
中の人:明るい曲かと言われたら、少し違う気もするけれど、私たちはひたむきに頑張ってます! というコンセプトの曲ではこれが一番だと思う。
びんちゃん:MVがあるのはいいね。曲だけよりも楽しい。あ、もがちゃん!! *7もがちゃんでしょこの子!?
中の人:そうだけど……もがちゃんはわかるの?
びんちゃん:もがちゃんは知ってる! わーかわいいなぁ……でんぱ組ってさあ、キンプリみたいじゃない?
中の人:えっ? キンプリって、あのキンプリ? King&Prince?*8
びんちゃん:そう! 似てる気がする!
中の人:うーん、私にはいまいちわからないけれど……どういったところが……?
びんちゃん:こう、MVで一人ずつの顔が大きくバーン! って画面に映し出されるのが、似てない?
中の人:アイドルのMVってそれが普通だと思ってたけど、嵐は一人ずつ大きく抜かれたりしないのかな。嵐のMV見たことないから分かんないや……今度の活動で見ればいいのか!
<追記>
第2回オフライン活動でYouTubeに掲載されている「Happiness」のMVをびんちゃんと一緒に視聴しましたが、5人全員で画面に映っている時間が抜かれている時間よりも圧倒的に長く(というか1人だけで抜かれる場面がほとんど存在せず)驚きました。もしかしたらアイドルとはこうであるべき!というアイドルの哲学みたいなものがグループによっても違うのかもしれません。その辺を考えてみても面白いかもしれませんね。
――続いて、びんちゃんの好きなアイドルグループ嵐*9のベストアルバム「5×20 All the BEST!! 1999-2019」より「5×20」を聴くことに。
びんちゃん:この曲は嵐皆で作詞した曲なんだけど、最終的には翔くんが全部手直ししたんだって。
中の人:おおー、さすが櫻井くん。サクラップ*10だねサクラップ。
びんちゃん:そう! 翔くんってラップ書くじゃん? だからめちゃめちゃ韻踏んでるの。ほら、「嵐、探し、辺り騒がしい」とか。
中の人:めっちゃ韻踏むじゃん。ヒプノシスマイク? みたいだね。もはや櫻井くんラッパーになった方が良いのでは?
びんちゃん:やっぱりさー、本人たちが作詞するのって良いよね。今までのことが歌詞になってるっていうのに感動しちゃう。この「"5" is my treasure number」っていう歌詞とか、本人たちが書いてるんだ! って思うとはあああああああ!!!! ってなる。
中の人:5にこだわってる感じとか、ファンとしては嬉しいだろうね。
びんちゃん:元々この歌詞は「our treasure number」になる予定だったんだって。でも最終的に「my」に変えたって、この前行った展覧会*11で書いてあった。
中の人:へーそうなんだ。確かに「our」よりも「my」の方が好きかも。一人ひとりが5人という数字を大切に思ってるのが伝わってくる。
びんちゃん:あと、最後に「ありがとう」って歌うのも良い! はあああああ……実はこれ去年の札幌のコンサート初日で初めて歌った曲なの。だから私は初めて聴いたファンのうちの一人なんだ。良い思い出だなあ……学校から直行したんだよね。団扇持って学校行ったもん。
中の人:そういえば、この曲、JUMP*12の「H.our Time」とちょっと似てる気がする。「H.our Time」も10周年の曲なんだけどさ。
びんちゃん:本当?それ聴いてみたいかも。
――中の人の「似ている気がする」という言葉からお次はHey!Say!JUMP10周年ベストアルバム「Hey! Say! JUMP 2007-2017 I/O」より「H.our Time」
中の人:この曲もメンバー作詞で、自分の歌うパートをそれぞれが書いたみたいだよ。
びんちゃん:曲名の「H.our」のHってどういうこと?
中の人:「時間」と「私たち」をかけてるんじゃない? あとHey!Say!JUMPのHとか? うーんこれはJUMPのおたくに聞いたほうがいいかも……
びんちゃん:「正直躓いたときもあった 10年 理想とは違くて」とか、今までのことを歌ってる歌詞が良いよね。
中の人:あと、今までにリリースされた曲の歌詞を少しずつ入れてるのも良い!この「喜び悲しみ 受け入れて生きる」はデビュー曲*13の歌詞なの!
びんちゃん:激アツだね。激アツフェス。
中の人:なんか、今思ったんだけど、アイドルの曲って「この子たちにしか歌えない!!」っていう歌詞じゃないとだめな気がする。
びんちゃん:どういうこと?
中の人:うーんと、上手く言えないかもしれないけど、アイドルって「何が出来るの?」みたいによく言われるじゃん。ダンスならダンサー、歌なら歌手、っていう風にあらゆる分野でもっと秀でた人がいる。じゃあアイドルの価値って何?って話になると思うんだけど、私は「その子の存在そのもの」が価値になる存在こそアイドルだと思うんだよね。何が出来る、何に秀でている、じゃなくて、その子がそこにいるというそれだけで価値があるというか……だからこそ、その子にしかない魅力が引き出せるような曲、その子にしか歌えない歌詞の曲こそがアイドル楽曲だと思うの。
びんちゃん:じゃあ、このJUMPの曲とか「5×20」はまさにそれだ。
中の人:そうなの! だからアイドル楽曲として物凄く好きなんだよね。でも、そういった点で、少し残念だなあというか、うーんと思った曲もあるんだよね……
びんちゃん:それって誰の曲?
中の人:HiHi Jets*14の「Be my story」って曲。嫌いじゃないし良い曲なんだけど、「その子にしか歌えない」という観点で言ったら、うーん、かも……
――折角だからその曲も聴いてみよう、ということで、お次はジャニーズJr.内ユニットHiHi Jets「Be my story」。
びんちゃん:「Be my story」……物語になる、かあ。普通に良い曲だと思うんだけど……
中の人:確かに素敵な歌詞だし、きれいな曲だとは思うんだけど、HiHi Jetsのための曲かと言われたらそうじゃない気がするんだよね。
びんちゃん:ええ? どういうことそれ?
中の人:なんというか、この曲って誰でも歌えそうな歌詞じゃない?「僕らはどんな未来だとしても乗り越えていくんだ」って、全くグループのカラーが違う少年忍者が歌っても、世代が全く違う嵐やJUMPが歌っても良くない? って思っちゃう。
びんちゃん:まあ、確かに嵐が歌っててもおかしくはないね。ていうか歌ってそうかも。
中の人:この子たちじゃないと歌えない曲、この子たちの年齢だからこそ光る曲をもっと歌ってほしいなあって思うんだよね。例えば、エビ中*15の「大人はわかってくれない」は大人への反抗心を歌った曲なんだけど、リリース当時メンバーのほとんどが中学生だったエビ中だからこそ輝いた一曲だと思うの。あとトラジャ*16の「Dance With Me ~Lesson1~ 」は歌詞そのものがグループを描いていたり、「この年齢だから……」っていう要素があったりはしないけれど、全体を通して感じられるダンス! アメリカン! 楽しい! フゥー!! みたいな雰囲気はトラジャにしか歌えないなって思わせてくるんだよね。何も歌詞をメンバーやグループとリンクさせろ!ってわけじゃなくて、どこかに「この曲は紛れもなくHiHi Jetsにしか歌えない曲だ」っていう要素を入れてほしかった。特に1曲目のオリジナル曲が「HiHi Jets」っていうグループ名がそのままタイトルになった曲だったからそう思うのかも……
びんちゃん:「A・RA・SHI」*17方式だ。
中の人:まあアニメの主題歌だから仕方ない部分もあるんだろうけどね。でも、その後に発表された「Eyes of the future」*18がどうやったってHiHi Jetsにしか歌えない曲だったから余計に残念だったの!! はあああああああ…………まあ曲がもらえただけ良いと思わないと……贅沢を言ってはいけない……そもそも表舞台に立てることが幸せなんだから……
びんちゃん:ひえーー……なんか怖いよあなた……もはやアイドルの曲ってなんなんだろうって境地になってきたね……そろそろ普通のJ-POPとか休憩がてら聴いてみない?
中の人:いいけど、そもそも最近のJ-POP分かんないんだよなあ……アイドルしか普段聴かないから……
びんちゃん:とりあえず菅田*19聴こう!! 菅田!!! 菅田は良いから!!!
――中の人の「そもそも最近のJ-POP何流行ってるかわかんねえ!!」という言葉からお次は菅田将暉セカンドアルバム「LOVE」より「キスだけでfeat.あいみょん」
びんちゃん:これは菅田とあいみょんが二人で作った曲だよー!
中の人:私あいみょんの曲聴くの初めてかもしれねえ……
びんちゃん:え、本当に?「マリーゴールド」とか聴いたことない?
中の人:多分ない……いや分からない……聞いたら分かるかもしれないからちょっとそれ歌ってほしい……
びんちゃん:いや、今「キスだけで」聴いてるから歌えない……この曲はね、夜の代々木公園で作った曲なんだよ。
中の人:え? 代々木公園で? デング熱の?
びんちゃん:うん、切り株に座って作ったんだって。
中の人:切り株……切り株に座る必要性が分からない……普通に室内で作ったらいいのに……
びんちゃん:この曲の歌詞は簡単に言うと「彼女が生理中だから仕方なくキスまでで帰す」っていうもの。
中の人:生々しい!! 生々しすぎないそれ!? 菅田将暉とあいみょんそんなの歌っちゃうの!?
びんちゃん:この「お前今日は女だから」っていう歌詞とか、ほら、もろそうじゃん。やばいねー! やばいよねーこれ!!
中の人:「キスだけでいけそう」とか、おお……って感じだね。ていうかこれがアイドルとその他のJ-POPの違いのような気がしてきた。
びんちゃん:どういうこと?
中の人:いや、アイドルってこんなに生々しい歌詞歌わないなーと思って。未来に向かって頑張る! とか、教室の窓際の席のあの子♡みたいな歌詞は歌うけど、こんなに直接的なのは歌わないじゃん。
びんちゃん:うーん、そうかも。
中の人:もし嵐がこういう曲歌ってたらどう思う?
びんちゃん:それは……フゥー!ってなるね。
中の人:フゥー!……軽いな!!
びんちゃん:逆にジャニーズJr.の子が歌ってたらどう思う?
中の人:うーん、「あ、それは解釈違いかなあ、アハハ……」って薄ら笑い浮かべると思う。ちょっとイメージと違うかも。もしかしたらわたしたちはアイドルに対して、現実離れした、ある意味でフィクションな存在を求めてるのかも。あ、それこそ「偶像」か。
そんなわけでただひたすらアイドルを聴きながら駄弁るだけで終了した第1回オフライン活動ですが、今回出た「アイドル楽曲とは何か?」という問いに対する本サークルの答えと、それにまつわるいくつかの考えを以下に示しておきます。
- アイドル楽曲は「その子にしか歌えない曲」であってほしい。
- それは歌詞がグループの姿そのものを描いていたり、本人たちの年齢にあっていたりしてほしい。
- また、上記の要素がなかったとしても、明確な理由を言語化することはできないけれど「この子たちのための曲だ」と納得させられる要素を持っていてほしい。
- 出来るだけ「偶像」性を壊さない楽曲であってほしい。
一応、今回の活動で出た考えをまとめてみましたが、やっぱり明らかな答えが出た、という手ごたえは感じませんね……地下アイドルの子が他のメジャーアイドルグループの曲を歌ったり、ジャニーズJr.が先輩グループの曲を歌ったりすることはよくありますけど、そこで違和感を覚えることもあまりないわけですし……そもそも「その子にしか歌えない曲」なんてものはこの世に存在しない気もしてきますよね。うーん、アイドル楽曲は難しい!!
こんな風にこれからも本サークルはアイドルに対して楽しく真剣に考えていきたいと思いますので秋学期もよろしくお願いいたします! もちろん新入会もいつでもウェルカムです♡
記:幹事長
*1:一番に応援しているアイドルを指す言葉。主にジャニヲタの間で使われる。
*2:2014年に結成されたインディーズ女性アイドルグループ。ベッドイン会というなかなか過激な特典会で注目を集めましたが純粋に曲は良い。2017年解散。
*3:Instrumental。歌唱のない音楽。いや本当にアルバムの1曲目に入ってるんだってば!!!
*4:ジャニーズ事務所所属男性アイドルグループSexy Zoneの略称。2011年デビュー。みんな王子様みたいに格好良くてキラキラ王道アイドルです。
*5:セカンドアルバム「Sexy Second」の1曲目「Sexy Second」はインストです。
*6:ライブ&バー「秋葉原ディアステージ」の従業員たちで2009年に結成。メンバー全員がオタクでアキバカルチャー色の強いグループです。
*7:最上もがちゃん。2017年8月にグループ脱退。なぜびんちゃんがもがちゃんのことを知っているのかは謎。
*8:ジャニーズ事務所所属男性アイドルグループ。2017年デビュー。メンバー全員が天然。
*9:ジャニーズ事務所所属アイドルグループ。1999年デビュー。こんな説明を書かなくても良いくらい有名な国民的アイドル。
*11:現在ソニーミュージック六本木ミュージアムにて期間限定開催中「ARASHI EXHIBITION "JOURNEY" 嵐を旅する展覧会」のこと。嵐に関する展示がされているみたいです。びんちゃんによるレポを近日公開予定。
*12:ジャニーズ事務所所属男性アイドルグループHey!Say!JUMPの略称。2007年デビュー。メンバー全員平成生まれなのでこのグループ名です。
*13:2007年リリース「Ultra Music Power」
*14:ジャニーズJr.内ユニット。2015年結成。ローラースケートが特徴的。
*15:私立恵比寿中学の略称。2009年結成。コンセプトは「永遠に中学生」
*16:Travis Japanの略称。ジャニーズJr.内ユニット。2012年結成。シンクロダンスが特徴的。
*17:1999年リリース。嵐のデビュー曲。
*18:2019年8月に発表された楽曲。メンバー作詞のラップや「時は2019年」という歌詞など、今のHiHi Jetsにしか歌えない、という点で最強のアイドル楽曲だと思います。
これからのアイドルオタクの話をしよう! - WebZINE「OTAKU meets IDOL」第1回
初めまして。早稲田大学アイドルと言葉で遊ぼうの会 幹事長兼SNSの中の人と申します。普段はジャニーズJr.のオタクをしつつ、インターネットの片隅でアイドルに関する文章を垂れ流しています。サークルを作ったからには一応活動っぽいことをせねば!というわけでWebZINEを始めてみました!ひゅーーーぱちぱちぱち。目指すは現代版「よい子の歌謡曲」またはポスト「Myojo」。いつかはわたしたちも恋人にしたいランキングとかやってみたいですね!!!
さて、皆さんはアイドル好きですか?ていうかアイドルって知ってますか?制服風の衣装を身に纏い、長い黒髪をツインテールにまとめ、遠目から見たらかわいいような、よく見たらかわいくないような女の子×n。または、胡散臭い笑顔を貼りつけ、ローラースケートで駆け抜ける男の子×n。偶像。作り物。握手券を餌にCDを売りつける。チケット流通センター。最前列のチケットが50万円。(チケットの不正転売は違法です。正規ルートで買って入りましょうね……)こんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか。ていうかそんな人がほとんどなのではないでしょうか。別にそれが間違っているとは言いませんし、無理やり訂正するつもりもありません。でも、安っぽいとか嘘っぽいとか、そういう固定概念でガッチガチに固めて、一生アイドルに触れずに終わるのはもったいない、と思うのです。少なくとも、小学校に入学した年にHey!Say!JUMPの虜になり、小学校高学年では七森中☆ごらく部やアニ☆ゆめをはじめとする女性アイドル声優(これ書いてて思ったんだが、もしかしてアイドル声優のユニット名には☆を入れないといけない決まりでもあるのか?)、中学生で乙女新党、高校に入り色々な地下アイドルを嗜み、そして現在はジャニーズJr.にどっぷりというアイドルオタクな人生を歩んできたわたしはそう思うのです。ですから、今回のWebZINEでは「アイドルってなに?」「アイドルオタクってなんでアイドルが好きなの?」という問いに対する幹事長なりの答えを踏まえ、本サークルへの勧誘をしていきたいと思います!!割とガチで人がいないのでガンガン行きます!!!
では、さっそく本題に入りますが、そもそもアイドルとは何なのでしょうか。みんな大好きGoogle先生に聞いてみたところこのような答えが返ってきました。
アイドルとは、「偶像」「崇拝される人や物」「あこがれの的」「熱狂的なファンをもつ人」を指す英語(idol)に由来する語[1]。稲増龍夫やカネコシュウヘイは、日本の芸能界における「アイドル」を『成長過程をファンと共有し、存在そのものの魅力で活躍する人物』と定義している[2]。
(アイドル - Wikipedia)
成長過程をファンと共有する。存在そのものの魅力で活躍する。もしかしたらアイドルオタクじゃない人は何言ってんじゃと言う気持ちかもしれませんが、一度でもアイドルに夢中になった経験のある人は「なるほど」と思ったのではないでしょうか。
わたしは海外のアイドル事情に疎いのでK-POPやC-POPアイドルのシステムがどうなっているのかは分かりませんが、少なくとも日本のアイドルには必ずと言っても良いほどの高確率で「成長過程を見守る」というシステムが存在しているような気がします。例えば、モーニング娘。の所属するハロープロジェクトではハロプロ研修生と呼ばれる括りが存在し、彼女たちは既存ユニットへの参加を目指して日々レッスンに励んでいます。また、光GENJIや嵐をはじめとするジャニーズ事務所所属の国民的アイドルもかつてはジャニーズJr.と呼ばれる研修生でした。その他にもAKBの研修生制度やスターダスト所属アイドルの路上ライブをする下積み時代etc……アイドルをマネジメントする事務所の多くで研修生制度やそれに準ずるものが採用されているのです。つまりこれは、我が国のアイドル文化における約半世紀以上の歴史の中で「研修生制度を作っておけば儲かる!!!」ということが実証されている、と言い換えることができるのではないでしょうか。
じゃあなんで研修生制度を作ったら儲かるんだよっていう話になると思うんですけど、それについてはもはや説明が要らないと思うんですよね。例えば、小さな子どもが初めて言葉を発した時、歩いた時、普通わたしたちはそれに感動し、その瞬間に立ち会えたことに感謝するじゃないですか。そういう「できなかったことができた」みたいなことに心動かされるのは当たり前で、小さなもの、幼く弱いものを慈しむ本能的なものだと思うのです。そして研修生制度はそれを軸に作られている。昨日まで音を外してた子が今日は上手く歌いきれた、半年前までローラースケートで転んでた子が今日は転ばなかった、1年前まで小さなステージでパフォーマンスをしていた子が今日は横浜アリーナに立った、アイドルオタクというのはそういう瞬間が普通の人よりも好きな人種らしいのです。
とは言ってみたものの実を言うとそれもなんか違う気がして。というのも正直言ってわたしはそんなにきれいな気持ちでアイドルオタクしてないんですよね。もっと汚い気持ち、黒いものが渦巻いた気持ちと言うか。少なくともわたしは自担(=自分の担当アイドル。一番に応援しているアイドルという意味。推しという表現を使うこともあります)の成長を素直に喜んだり、一つずつ大きなステージに立っていく姿に感動したり、というタイプの人間ではないのです。ていうかむしろ成長しないで、ずっとこのままでいて、とさえ思っています。ずっと小さな箱の中にいればいい、ずっと幼いままでいればいい、と。そしてその理由は、わたしがアイドルに惹かれる理由、わたしが一人の男の子に対して「この子こそがアイドル」と思う理由とイコールで結ばれている、気がします。
もうどこで聞いたのかは忘れてしまったけれど、心に強く残っているあるエピソードがあります。確か、アイドルや舞台といったショービジネスに携わる人の原体験として語られた言葉。若いときに見た舞台。ステージ上で歌い踊りきらきらと輝く若いミュージカルスターたち。すごい、素敵だ、感動した。しかし、本当は、その俳優たちは自分より何歳も年上で舞台裏ではげえげえと苦しそうに嘔吐していた。普通なら夢が壊されたと幻滅してしまうような話だけど、それに物凄く惹かれてしまった。いや、そんな裏があるからこそショービジネスに惹かれた。この人はそういう切り替えや二面性、徹底した「作り上げる」力に魅力を感じ、ショービジネスの虜になってしまったわけなのですが、わたしの「アイドルが好きだ!」という気持ちもそれと同じものであるような気がします。
「普通」の男の子がアイドルになる瞬間。何も考えていないような顔した男の子の表情が瞬きの速さでで切り替わり、会場の空気を自分のものにする瞬間。そういう一瞬一瞬がわたしは好きで好きでたまらなくて、ずっと見ていたくて、だからアイドルオタクをしているんだと思います。そしてそれが見られるのはアイドルの要素と普通の子の要素が半分ずつくらい、またはどっちかがほんの少しだけ多いくらいの子、つまりメジャーデビューをしていないような研修生の子のみなのです。午前は学校に通ってるけど、午後は帝国劇場に立っている。平日は制服着てるけど、土日は秋葉原のステージで衣装を着てる。そういう二面性に無条件にときめいてしまうのです。わたしのいる世界と彼らのいる世界は地続きかもしれない、という感覚にくらくらしてしまうのです。そして、そういう「普通」の要素をたくさん持っているのに、何かのスイッチが入れば一瞬でアイドルになってしまう子こそが「アイドル」だとわたしは思うのです。でもそれには「普通」の要素の存在が必要不可欠なわけで、それゆえ「普通」を失わないよう、つまり、成長しないよう願ってしまうのです。
でもこれってよくよく考えたら超残酷で汚い行為ですよね。表向きは「もっと大きな会場でコンサート出来ますように!もっと沢山の人に愛されるアイドルになりますように!」って叫びつつも、本心では自分の私利私欲のために「成長しませんように」って願ってるの、超やばくないですか?これを消費行動と呼ばずに何と呼ぶのかっていう感じですよね……若いアイドルの子を応援するときに抱く背徳感ってもしかしたらこういうところからきてるのかもしれない。アイドルオタクって楽しいよ!!って高らかに叫ぶ人よくいますけど、わたしはそんなこととても口にはできません。だって辛いから。アイドルを消費する自分が情けなくて辛いし、「成長って素晴らしい!」みたいなきれいな言葉を盾に消費されていくアイドルを見るのも辛い。でもそこに何ともいえない恍惚感もあるわけで、だからずるずるオタクを続ける。しかしやっぱり成長していくアイドル見て病む。そんな自分がキモくて更に病む。でも現場(=コンサートやライブ)行ったら超楽しいイェイ!これの繰り返し。こんなのほとんどビョーキですよビョーキ。でも、ほとんどビョーキだからこそ思うこと、考えることもあるわけで。わたしはそういう気持ちを文章にして残すことを大事にしたいのです。「アイドルオタクだから」こその誰にも分ってもらえない、誰にも伝えられない気持ちを文章にしようよ。文章にしてみたらちょっとは笑い飛ばせるものになるかもしれないじゃん。本サークルを設立した意図はそれなのです。評論じゃないし批評でもない。主観まみれだし個人的な意見ばっかりだし何故か病んでるし無駄にハイテンションだし、どこのグループにも属せないし。そんなオタクで集まって文章を書いたらめちゃめちゃ面白いんじゃないか?幹事長のそんな思い付きからこのサークルは始まりました。
均一化されていく世界。いいよね、素敵だよね、以外の言葉が許されない世界。最近のアイドルオタクのTwitterのTLって割とそういう雰囲気で、わたしはそれがたまーに嫌になっちゃうんですけど、ここでは色んな考え方をありだよね、そういう意見もあるよねって受け止めていきたいんです。だからもし、現役早大生or附属校・系列校に在籍する方で、アイドルが大好きで、アイドルについての文章をここに載せてみたいという方がいらっしゃったら是非是非メールかTwitterのDMください。わたしもアイドルオタクが全力でぶつける言葉が読みたいです。
そんなわけで我々アイドルと言葉で遊ぼうの会好き勝手やっていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします!
記:幹事長